初冬を迎え、田んぼは荒涼とした風景となってしまった。稲刈りの後には稲の二番草とでも言いたい穭(ひつじ)が生えている。五月中旬に田植えをして、暑い夏を乗り切り、秋には黄金色の稲穂を垂れて収穫期を迎えたのであった。稲は暑い夏のさなかにたったの一時間ほど花を咲かせて実をつける。そんな営みを通して初めて米は取れるのである。
しかし、冬を前にして充実する見込みもないのに刈り取られた稲は懸命に穂をつけていた。20~30センチくらいしかない草丈にもかかわらず、冷たい風に吹かれながら……。動物も植物も「諦める」ということがない、その一点に我々人間は学ぶべきかもしれない。そうは言ってもことと次第によっては諦めることもしなくては生きていけないのも人の性(さが)なのだろう。田んぼの広がるランニングコースで以上のようなことを考えてしまった。