北国では珍しいお茶の花

先輩の知人に民謡の歌い手がいる。数々の大会に出場して、その道ではかなり有名らしい。全国大会にも毎年のように出ていて、何回も優勝しているそうだ。今日(平成29.11.2)、お茶の木をいただいたお礼などで本人の家にお邪魔して一杯やってきた。聞くところによると、2週間前の大会でまたもや優勝したそうだ。年代別の部門に分かれていて、31人のエントリーで2名欠場し、29名の争いでみごとに優勝、大きな賞状を見せてもらった。「こんなにもらっていると、額を買うのも大変でしょう。」と話したら、家ではファイルにしていると言う。大会の度にに受賞している人には、もっともな話だと感心してしまった。そんな人なのだが、ふだんも極めて控えめな、道を極めた人ならではの生活ぶりで、結果についてはいっさい言及したことがなく、いつも「母ちゃんを連れて、遊びに行ってくる」という言い方をしている。その行き先が全国大会である。昔、私が入学式で行った東京九段の日本武道館などで開かれるようだ。あのような文字通りの大舞台で歌う、そして優勝…、もはやプロ級である。これまでにも酒席で何度かお願いし、聞かせてもらったことがある。由利地方の草刈り歌などはなんとも素朴でのびやかで、情景が浮かんでくることに感心したものだった。その時に話していた。「人に語って聞かせるように歌う、ということを心がけている」と。自分はその時、ギターもそんなゆとりをもって弾けたら、もう少しましな音色が出せるのだろうと密かに考えた。

その人が家にやってきたときに、飲み物を出した。雑談の途中で、カフェラテの無糖を飲んだ私が、妻に「やはり変に甘くて、渋茶の方がいい。」というようなことを言ったら、彼が言った。「俺は大会が近くなれば、ふだんは飲まない甘いものも口にするようにしている。刺激物はだめだ。ミョウガは大好きだが、ノドにはよくない。それからメロンもよくない。声が荒れるんだ。」なんという心構えだろうか。道を極めている人は、飲食にまで気を使って本番に備えているのだ。たいしたものだなあと、聞いたこちらがすがすがしい気分になったのであった。

昨年11月、その先輩からお茶の木をいただいた。寒くなっても白い可憐な花が咲くというので鉢植えにして楽しんでいた。しかし、根が太いのしかなく、育つのかなと心配していたら、案の定、枯れてしまった。そこで、今年、再びいただいて、垣根の代わりにしようと地植えをした。それが写真である。10月12日、我が家のお茶記念日だ。元気に育つという予感がかなり実感になりつつある。「北限の茶」というのが北東北各県にあるそうで、秋田県内でも能代の檜山茶が知られている。順調に育って来年の春に若葉が出たら、自家製の新茶が飲めるかもしれない。楽しみが一つ増えたことに感謝し、大切に育てていこうと木(花)を見るたびにわくわくしている。

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