これまた方言とは縁がない写真。我が家の庭にあるブラックベリーの花である。実はジャムや果実酒として重宝している。

  てづま

今回の二つの方言は、少年時代の思い出に関係している。明治28年生まれの祖父は、昭和28年生まれの私と2歳下の弟に、手品のことを「てづま」などと言っていた。TVで手品を見ているときなどに使うので、「てじな」を「てづま」と間違って言っているのだ、と、我々兄弟は陰で笑いながら聞いていた。小学校を終え、中学校3年の時に祖父は亡くなった。その後、社会人となり、50歳くらいになったときに新たな発見をした。江戸川柳などを調べるために、分厚い古語辞典を購入し、その中に「てづま」を見つけたのである。古くは「てづま」という言葉だったのだ。自分が知らなかっただけなのだと、一人で恥ずかしくなってしまった。祖父は昔ながらの言葉遣いをしていたのであり、古語が方言としてこの地方に残っていたのである。

静かに食べたんせ

これは、少年時代に釜石のおじさんの家に遊びに行った折のことである。海辺の両石町に家があり、朝食にはさすがに魚料理ばかり出てくるのであった。朝からイカ刺身やら焼き魚が並ぶのだ。メニューはさておいて、問題は上記のおばさんの言葉である。にこにこしながら「静かに食べたんせ」と何度も言うので、自分と弟はひそかに目を合わせて、吹き出しそうになった。なぜなら、自分たちは決してうるさくもしていないし、無言で食べていたのだ。それなのに、「静かに」を連呼されると、どうにもおかしくて仕方がなかった。南部方言のことなど知らなかったのである。

何年もして分かったのだが、「静かに」は、「心静かに、穏やかに」の意味で、おばさんは「ゆっくりと」たくさん食べてください、と言っていたのだ。なお、2011年の東日本大震災で、両石町でも高台にあった叔父夫婦の家は被害を受け、二人とも亡くなってしまった。翌年訪れたら町は全滅であった。さらに数年後に行ったら、町全体がかさ上げされ、埋め立てられて面影は皆無であった。以前の町は消えたのである。

 

 

 

 

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