<季節の花>
<入選> 山腹に 雲垂れ広ぐ 夏の朝
八月は,2度投句していた。1回目の中から「~トマトの香」が秀逸に選ばれ,一週間した10月8日に2度目の投句の中から,この句が入選した。下手な鉄砲も何とやらなのかもしれない。それにしても,毎回掲載されている常連の皆さんは,どれくらいの頻度で投句しているのだろうか。とても私には真似できない。なお,先月は次の3句を送っている。掲載されるかどうか,少しばかり気に入った自信作なので,ここに挙げておこう。
・種飛ばす 通草(あけび)に童心 よみがえり
・けんぽなし 手に取る子もなく 熟れにけり
・熊食べし 山梨散らばる 沢で釣る
1句目。何年か前に,山で採ってきたアケビの種を鉢に植えて育ててきた。2年前にぶどう棚の端に地植えをした。すると,今年はたくさんの実が生って,おおいに食べさせてもらった。その時の句である。
2句目。自分が子どもの頃は、村じゅうを経巡(へめぐ)っては食べられる果実をむさぼった。一日のお小遣いも5円~10円という時代である。だから,どこの家のどのあたりに何が植えられているか,熟知していた,つもりである。すもも・あんず・柿・桃・栗などなど。栗は台風が通過した翌朝,誰よりも早く取りにいった。大風で労せずして拾えるからである。川の近くではグミもあった。食べ過ぎると糞詰まりを起こすと言われたが,かまわず食べたものだ。それらの中で,ケンポナシはある家だけにある貴重なものであった。それも、ほとんどの果実が終わりを告げる秋から初冬にかけて手に入るのだ。雪の上に落ちたケンポナシの甘い記憶は今でも鮮明だ。太田の小学校にあるのを見つけた時は,一人で感動したものだ。ところが,小学生は誰も拾わないのであった。(先週,地域の川の土手に2本あるのを見つけたのは、幸いであった。)
3句目。昔,ある山間(やまあい)の知人と渓流釣りに出かけたことがあった。9月半ばのことである。彼は漁協の役員をしていて,狩猟もやるという,山にはたいへんに詳しい人である。何時間も沢を登ってイワナとヤマメを釣った。餌はブドウ虫を持参したが食いが悪く,知人が準備したコオロギにしたら釣れだした。やはり魚たちは季節のものを食していることを実感した。途中、十数メートルもある岩盤の上を沢水が流れていて,そこに一面,川のりが生えていた。同じ岩盤でも傾斜角度が少し違うだけで,そこには生えていない。初めて見る光景に驚きながら,そののりを食べてみた。まさに「のり」なのであった。(この「川のり」の場所には,いつか訪れてみたいと諦めきれないでいる。)そして、少し行くと,沢べりにたくさんの山梨が落ちていた。なぜかわからずにいると、山の達人が教えてくれた。クマが木に登って食べた跡であると。言われたままに木の上に目をやると,一部折れかけた細い枝に、残りの山梨が生っていた。のりも山梨も一人では行けない奥山である。カメラを持っていかなかったことを悔やんでも,後の祭りである。(釣も山菜採りも同じだが,写真とはなかなか両立しないため,カメラは持参しないことにしているのだ。)
さて,この3句は,どうなることか。