前回は春の運動会へ行った時のことを話したが、今回は秋の文化祭について思い出してみようと思う。招待状を手にするきっかけは、前回とほぼ同じである。誰も貴重な日曜日に刑務所へなど行きたくないのだ。(我々の業界では昭和50年代の昔は土曜日も勤務であった。平成14年頃から週休2日になったはずだ。)
秋の文化祭では、受刑者が所内で作ったさまざまな作品が格安で販売される。タンスなどの家具、木工製品、などなど雑多であった。碁盤なども買えなかったが、かなりの割安であった。また、100名限定で、当日の刑務所で出される給食が食べられるという催しがあった。これには事前に予約が必要で、早速私も申し込んだのだが、残念ながら選に漏れてしまった。さまざまな作品(商品)展示を見て回ったが、細かいことはあまり印象に残っていない。
ふだんのことに少し触れよう。笹下刑務所は、もちろん高い塀で囲まれており、中は見えない。ところがである。私の勤務先はすぐ隣に面しておりながら、急な坂を上った高台にあった。したがって、中の様子は一部、見えたのである。朝、受刑者が一列に並んで布団を干しに行く様子、並んで運動する様子などなど。塀の周りは約1.5kmで、冬などはランニングしたものである。また、高い塀を利用してテニスの壁打ちををした者が失敗して塀の中へボールを打ち込んでしまった時には、中からボールを返してくれたことも幾度となくあったのである。なかなか体験できない貴重な日々であったと、懐かしく思い出している。