かつて勤務した山間の村に、11月3日、何年ぶりかで紅葉の撮影に出かけた。落葉してしまっている木々もあったが、概ね最盛期と言ってよいほどの色づきである。出かけるときは好天だったのに、残念なことに雲が出始め、流れるのを待っていたら雨まで降ってきた。しかし、秋の空は瞬く間に変わる。仕方がないから三脚にカメラを据えて、待つことにした。何の音だろう、手持ちの打ち上げ花火でも上げるような音が何度かする。「熊目撃、注意」の看板があるので、地域の人が山に入って作業でもしているのだろうか。
前回来たときには、茅葺屋根の廃屋が一軒あった。しかし、今回はそれが増えていた。茅葺の茅は見る影もなく、なくなっていた。これらの家で暮らしていた人たちは、山を下りて行ったのだろう。どんな暮らしをしているのだろうか。自分の家の近くの廃屋は年寄り夫婦が亡くなって、今は葛やススキに覆われている。この集落だけでなく、街中でも空き家がどんどん増えている。解体にはお金がかかるため、放置されたままである。なんだかやるせなさを感じてしまう。皮肉なことに、紅葉は昔と変わらずに美しく秋の日を浴びていた。