3月も半ばを迎え,卒業の季節となった。退職した今は年度末の慌ただしさが懐かしく思い出される。新年度への準備もあり,忙しい中にも期待感があったものだ。
さて,ここ田園地帯では,落穂(秋の収穫時に落ちた稲穂)を食べるために多くの白鳥がやってくる。冬の間は雪に覆われるため河川・湖沼などの水辺にいるのだが,秋口や春は田んぼへやってくる。そして,盛んに飛び回る。厳冬期はなかなか飛び立たないが,春は動きが活発である。そのためシャッターチャンスに恵まれる。名の通りに白い鳥なのだが,泥の中から夢中で餌をあさるため,よごれているものも見かける。雪の白さと比べられて割に合わない時期でもある。そんな人の感慨など,どこ吹く風,遠い北の地へ帰るためのエネルギー補給に懸命である。そんなにたくさんの落穂はあるのかと,疑念を抱く方もいるかもしれない。今は刈り取りも機械化されているからである。昨秋,畑に使うつもりで藁を取りに行ったら,あちこちにまとまって籾(もみ…刈り取りして脱穀する前のもみ米)があった。刈り取り・脱穀・裁断・選別の作業を一台の機械で行うため,高速の作業ではどうしても稲わらといっしょにくず籾が排出されてしまうのだ。一か所にある量たるや一升・二升どころではなかった。したがって,白鳥には絶好の餌場なのである。しかも広くて見通しがきくため,安全なのだ。鳥インフルエンザ騒動以来,白鳥への餌やりは禁止されているので心配する向きもあったが,田園地帯はしっかりと彼らを支えているのである。