気になる日本語の乱れは数多く、NHKでさえずいぶん増えたし、民放のTV・ラジオ・雑誌の類だときりがないほどだ。いくつか記録してあるが、ここで紹介するのは野暮に思える。でも、一つだけ世に氾濫している「すごい」の使い方について言いたい。「すごい+かわいい」という表現。「すごい」は「おいしい・美しい」などと同じ形容詞である。名詞(体言)にかかる(修飾する)ときは「すごい顔」などのように「~い」(連体形)だが、「うれしい・悲しい」などの活用する言葉(用言)にかかるときは、「すごくうれしい・悲しい」のように「~く」の形(連用形)になる。それが無頓着に「すごい」だらけなのだ。つまり、「すごい かわいい」は×で、「すごく かわいい」が正しいのである。まあ、これは間違いなのだが…。
近年、帽子をかぶったまま食事をする人たちを見かける。青森の観光地「ねぶた館」で見た時は真夏の暑い日だったので、外からレストラン(食堂)に入って来ても脱ぎ(とり)忘れたのだろうと初めは思った。私よりも一回りも先輩の男女の集団であった。しかし、そういう目で見渡すと、秋田県内でも東京でも地域差はなく、季節にも関係ないことがわかってきた。それも、若者のみならずマナーを身に着けているはずの70代以上の年配者に多いのだ。私は高級レストランには行くこともないので、そういう所ではどうなのか知らない。また、芸能人などがファッションの一部だからと脱が(とら)ないのは理解できる。もしかするとこれは、大衆だけのことなのかも知れない。しかし、国民の大部分は大衆であろう。いずれにせよ、子どもの頃から、家や建物に入ったら帽子や外套は脱ぐものだと教えられて育った私には、おもしろくない。まして、ご飯をいただく時に至っては、何をか言わんやである。これでは、「今の若者は…。」などと言う資格がないのは当たり前だし、若者に範を示すべき年寄りの極めて情けない状況ではないか。日本人の謙虚さ、控えめ、奥ゆかしさはいずこへ。亡き健さんの後姿を思い出そうではないか。