年を取ると昔のことばかり思い出されるようだ。今朝、枝豆の残りを取った後の豆殻を焼いたのだが、ついでに収穫していたサツマイモを入れてみた。アルミホイールに包み、火中に放り込んでおいただけだが、なんともしっとりとしておいしかった。これには妻も大喜びであった。女性が焼き芋屋さんに群がるのも、今なら分かるような気がした。
と、思っていたら、50年以上も前の記憶がよみがえった。学生の頃、東京都文京区小石川にある福助商事(株)で守衛のアルバイトをしていたことがあった。昼は門番兼用の受付、夜は泊まり込みの仕事である。一日おきくらいに泊まるが体力的には楽な仕事で、貧しい学生にはたいへん助かるため2年間くらい続けた。秋になると、会社の前を焼き芋屋さんが通った。通るだけでなく前に必ず止まるのである。すると、守衛室の電話が鳴る。
「お願い、焼き芋を〇〇個買っておいて!いいわね。1個あげるから。」
会社の2階か3階か忘れたが、女子社員からの注文である。当時の自分は甘いものが苦手でほとんど口にしなかったので、焼き芋には関心はなかったが、ほとんど命令なので仕方なく買うのであった。しばらくすると女子社員が2~3人降りてきて、うれしそうに紙袋を受け取り、帰っていくのであった。こんなことが幾度となくあり、焼き芋屋のおじさんとは顔なじみになったほどである。3月、転勤の季節だったのだろう、一人の焼き芋社員が守衛室にやってきた。少し涙ぐみながら、
「大阪支店へ行くことになりました。これ、持っていて。」
と、言って小さなマスコット人形(写真)をよこした。彼女は自分と似たような年齢だったのであろう。全長7㎝ほどの小さなそれを半世紀が過ぎた今も何となく捨てられずに飾ってある。
秋の青空と、焼き芋と、女子社員……そんな光景が体の中を流れていく。

